水平線ログ

主にTwitterでの観劇感想ログ置き場です。ほぼ箇条書き。 ただいま抜けていた2016-2020のログを少しずつ転記中。

ハイバイ「夫婦」(2018)

・ハイバイ『夫婦』(2018) 配信視聴。
自分に、きょうだいに、母に、有形無形の暴力を振るい傷を刻みつづけた父の死。その死に、本当なら避けられたはずの苦しみがあったのではないかと病院とやりとりする「岩井秀人」と母。慕われた医療者でもあった暴君の父。ついに父と別れなかった母。

 ・順を追わず提示される過去も今もすべて、日用品で雑然とした舞台上で、そのシーンにいないはずの人々がうろついたまま演じられる。死んだ父のことを話す面々を「父」が見つめ「兄」と同俳優による担当医に「弟」が何かをそそのかす。これを、なにかの白黒がつくおはなしにする欲望/願いを拒むように。

 ・初演のイメージがあったので、今回「父」は岩井さん自ら演じていると分かったとき身が竦むような思いがした。第三者すらズタズタになるような物事を作品として描き、その上どうして。自分はどうしようもなく無神経なことを書いているかもしれなくて怖い。理解した振りはしたくないと思う。他人として。

・外面だけ覚えて中身と乖離しガタガタに破綻したような父のふるまい、きょうだいの「いつか、寝てるときに、な」、いつも悲しげな母(今回はヒゲ生えたままの山内さん)。でもユーモラスな描写を抜かない凄み。主語抜くお母さんめっちゃ分かる。あと「WOWOWに入った」でなんか泣きながら笑ってしまう。

 ・『て』『夫婦』連続で見ると、繋がりや、書かれた時期が空いているゆえ? の違いも感じられたような。
あと今回、友人と誘い合わせて同時視聴をしてみて、この「約束の時間のために予定を整えて準備する」行為が観劇でもほんと重要だったんだなと実感。ひとり視聴のネックたる腰の重さがかなり減った。

 

・書くのを忘れていた。説明の場でずっと黙っていて”岩井”さんにきつく詰められる担当医が、そのまま白衣を脱がされ兄の姿になって今度は父から詰められる構図にゾクッとしたんだった。イコールではないのにどこか似てしまう状況。コミュニケーションの不全からくる沈黙と苛立ち。