「金閣寺」
神奈川芸術劇場 ホール
19:00
- 『金閣寺』/目まぐるしいフラッシュバックのように、溝口という男の半生が舞台の上に明滅する。光と映像と身体表現が積み上げる、記憶の空間。小野寺修二の振付は、ヒトとモノの境目さえも曖昧になる。
- 異形の人の姿をし、耳を聾する異音を立てて、折々に現れては溝口を威圧する「金閣」。轟音。彼の心に食い込んだ畏怖を、ただ眺めさせはすまいと言わんばかりに、耳にねじ込まれる。
- 終幕、何もかもが取り払われ、むきだしになった舞台の広い虚空を、溝口は客席に座り見つめる。無音。深く息をつくほどの間があって、生きよう、と彼は呟く。新劇場を背負う宮本亜門の、ここで生きていく、という決意表明のようにも思えた。
- 初めて生で観た森田剛、あまりにも力強くしなやかで驚愕。元から舞台俳優の道を進んでいないのが不思議に思えるほど。隙のないキャスト陣、全員このままNY公演行きだそうで、向こうではどう評価されるのだろうか。