水平線ログ

主にTwitterでの観劇感想ログ置き場です。ほぼ箇条書き。 ただいま抜けていた2016-2020のログを少しずつ転記中。

PARCO劇場「大地」

2020.7.11

17:00

WOWOWオンデマンド・ライブ配信

 

・『大地』の印象的なところを思い返していた。1幕と2幕で繰り返される「そんなもの」のために起こされる重い選択と、皆の追認。あの空間では「そんなもの」は残酷にも遥か遠く、何を喪ってでも手にしたい宝石となる。そうして彼らが最後に沈黙し俯き選ぶものもまた、ハタから見れば多分「そんなもの」。

・役者という生き物、という言い回しは、俳優本人の口から聞かれることも珍しくないように思う。『大地』の空間にいたかれらは、まごうかたなき「役者という生き物」として定義されていた。

・言葉が足りないツイートだった。最後の「そんなもの」は、あのシーンで差し出されたものに対応するつもりで書いていた。ほとんどの人が重要とみなす”それ”だけなら、たぶん彼らは崇高に投げ出せた。でも”それ”と一緒に「そんなもの」が失われることこそ、彼らの最大の弱みであり恐怖であり。

・かくして生贄選びは陰鬱な顔をして傲慢に執り行われる。

 

・自分が配信見ていて最初に立ち止まってしまったツベルチェクがらみの引っ掛かりポイント、やはりこの1幕-2幕の対応を作るにあたってふたつに文脈的な繋がりも持たせようとした結果、扱いを重くしたいのか軽くしたいのか定まらなくなり粗雑さだけが残ってしまったように思えてきた。

・三谷さんの十八番の「すべてを繋げる」ロジックが、この度は個々の要素をメインで描きたいテーマ・展開のための小道具役割に寄せすぎてしまい、それぞれの要素のもつリアルな意味合いを脇に置いてしまったというか。1幕2幕で登場人物がどこかちぐはぐに見えてしまったのもその辺絡みかもしれない。

 

・ドランスキーの造形はかなり好き。彼の「フィクション全般に一切興味がなく意義も理解しない」という設定が、「つまり観客としてはまったくの無垢である」と変換されてあの最高のリアクションを呼び起こす流れがたまらない。