水平線ログ

主にTwitterでの観劇感想ログ置き場です。ほぼ箇条書き。 ただいま抜けていた2016-2020のログを少しずつ転記中。

She She Pop「遺言/誓約」

神奈川芸術劇場 中スタジオ
18:00

  • 「世界の小劇場Vol.1 ドイツ編」She She Pop『遺言/誓約』/出演者はShe She Popのメンバーと、彼らの父。定年退職済、演劇経験なしの。『リア王』の朗読と交互に発表される、老いた父と子供たちそれぞれの意見。同居、財産、愛情、について。
  • 自分たちの直面する/している問題をパフォーマンスにするのだから、その過程はスムーズではなかった。稽古中に起きた激しい衝突や言い争いは、「その時」の録音をヘッドフォンで聞きながら淡々と再現される。距離感。彼らの辿った道のりと、その到達点としての今に、思いを向ける。
  • 財産と愛情の最適な関係。100棚の本と100人の兵士。ユーモラスで切実なやりとりはリアのテクストに乗って「嵐の場」に流れつく。口々に放たれる互いの主張、それでもいつの間にか父も子も同じ言葉を口にしている。許します。許します。色々あったのでしょう。あなたを許します。
  • やがて父たちは服を脱ぎ、子どもたちはそれを着る。父たちの玉座に座り、そうしていつか、嵐の中で裸になるときがくる。折り重なって寝転がるかれらは、もう父も子もない。歌が流れている。「'cause I love you. 'cause I love you.」
  • 一般論で語られてしまいそうな問題を、他ならぬ彼ら個々人にしかできない方法でパフォーマンスに。個人的な話の持つ力と、古典の力が、単なる気のきいたアイデアに留まらず真摯に融合し、重く強い力を放っていた。
  • 忘れられない考察がいくつも語られていた。100人の兵士は今で言うならなんだろう、という問いに、外套だよ、と父の一人は答える。寒空に立つリアが求めたのは外套の尊厳。