てがみ座「燦々」
2020.2.11
14:00
・腕はある、審美眼もある、だけど己の”ほんいき”が見つからない、葛飾応為になる前のお栄の日々。木と紙の抽象的な装置。幕にも北斎の散らかった家の床にもなる大きな不織布。お栄が画の陰影を見出す夜鳴きそばと霧里花魁の場面の、最低限の言葉だけが響く静けさにほろほろと泣いた。
・頼まれていた北斎一門の画を慶賀に渡し、中に混ざる己の画に慶賀が目をやるかやらぬかとそわそわ見ているお栄の姿が、もの作る人、作ったものが人に響く様をこわごわ待つ人のそれで。ああいう時間はなにかの祈りに似ている。
・お栄の切実さを目にも手にも染みさせる前田亜季。舞台を離れ単に誰かの話を間近で聞いているような気のした、定型でない芝居の中村シユン。よかった。
音楽の趣味は合わなかったかな。先日の二兎社でも思ったが、こういう題材に「現代的」なジャンルの曲を乗せる行為は却って古臭く感じるときがある。
・ところで読売メンツのひとり、夏と冬にビッグサイトにいる(いた)感じのにいさんがいらしたが気のせいか。