水平線ログ

主にTwitterでの観劇感想ログ置き場です。ほぼ箇条書き。 ただいま抜けていた2016-2020のログを少しずつ転記中。

「春琴」

世田谷パブリックシアター
14:00

  • SePT+コンプリシテ共同制作『春琴』。劇場という所は、今では少なくなってしまった、ほんとうの暗闇をつくれる場所のひとつなのだと思い出した。質感を持ったモノとして広々とした空間を満たす陰影。蝋燭の仄かな明かり。微細な照明。突如として目を射抜く光と、切取られたように黒々とした影。
  • 今と繋がって始まる春琴の物語。春琴もまたモノ、けれど陰翳と同じように、生々しくそこに息づいている。実はわたしが一番エロスを感じたのは、幼いときの春琴だった。幼女の細く高い声、きゃらきゃらとした笑い声、そのあどけなさなまめかしさ。深津絵里の「声」の幅にぞくりと震える。
  • 若い佐助が深く深く潜っていった恍惚、老いた佐助のおぼろな記憶に宿る恍惚。傍からみれば滑稽なほどむごく恐ろしい触れ合い。けれど、どの佐助からも伝わるのはただただ、幸福。春琴を初めに知り、春琴しか生涯知りえなかった男のひたすらなしあわせが、さざなみのように宙を満たす。
  • チョウソンハの自在な肉体と、悲しいほどに純な佇まい。高田恵篤の、ひそやかさが身に染みこんだいっそ穏やかな動きと声。笈田ヨシの、芝居の領域を踏み越えてしまったような「ただ居る」圧倒的な存在。それぞれの佐助たち、は同時にまぎれもなく、ひとりの佐助でもあった。
  • 余談。カーテンコールは最終的に、マクバーニーはじめ裏方衆も呼び出されての大盛り上がり。おじぎをして下がろうとした笈田さんの靴が片方だけ脱げる、というなんだかわからないハプニングを目撃(笑) 脱げた靴を持ってフリフリしながら去っていった笈田さんが実にチャーミングでした。