マームとジプシー「cocoon」
- 波のように、『cocoon』の少女たちの姿が脳裏に再生される。あのリフレイン。声。まだまとまらない。
- ベージュ色の光、ベージュ色の砂だけがある空間に息づく、16歳の少女たちの記憶。少女たちに、少女たちの透明な世界に、まぼろしのように現れたほんものの戦争がぎりぎりと食い込んでいく。いつか、どこかの島で、彼女たちは死んだ。
- 音に満ちていた。蝉の声。少女たちの、色とりどりのさざめき。日常のリフレイン。ひとりひとり見分けがつくようになっ(てしまっ)た頃、さざめきは叫びに変わる。互いの名前を呼ぶ声。砂を蹴立てて駆け、つまづき、転ぶ音。重く鋭く鳴り続けるノイズ。止まらないリフレイン。
- 目を覆いたくなっても、耳を塞ぎたくなっても、リフレインは続く。痛みを、痛みを、痛みを繰り返したぐちゃぐちゃの身体で繰り返す追憶。明らかなモチーフを前に、用いられる言葉は今の言葉だった。突きつけられたのは、いつも、どこにでも存在しつづける、少女たちの物語だった。