「OPUS／作品」

新国立劇場　小劇場
13:00

• 芸術家の距離感。仕事仲間の距離感。友人の距離感。あるいはまた別の。いくつもの距離感を揺れ動きながら、ラザーラ・カルテットは今日も音楽を奏でる。小川絵梨子の演出作を観るのは三度目。戯曲を立体空間に立ち上げる、誠実な手つきが見えるような。

• 仕切ってる彼も、能天気な彼も、泰然たる彼も、去ってしまった彼も、やってきた彼女も。至高の音楽の名のもとに皆さんが高い「オトナ」パワーを駆使して関わり合う図は、笑えたりしんどかったり。少人数集団ならではの細かな関係性が、約2時間の中にクレバーにぎゅぎゅっと。

• 誰もがオトナだからこそ、言葉にしないあれこれは多いわけで。皆が気づきながら口にしなかった事実が叫ばれてしまう瞬間。カルテットにとって正当な、この上なく正当な決定が下されてしまう瞬間。小さな舞台を小さな客席が囲むあの空間だからこその驚異的いたたまれなさ！ひいい！

• と、きつい流れもありつつ細かくツボに入る会話が多々。相島さんと近藤さんの呼吸の良さときたらもう何なのか。「言ってないし言わせないよ！」複雑な人物像をさらっと見せる段田さんも、空気の違いが効果的な加藤さんも、押し引きの具合が絶妙な伊勢さんも、何とも贅沢キャスト。

• そういえば、あんなもっのすごい勢いのキスシーンをあんな至近距離で拝んだのは青山円形の『プライベート・ライヴズ』以来かも。勢いが良すぎて！ロマンチック度が！ゼロ！しかしそれが良い！