キャラメルボックス「アルジャーノンに花束を」イグニスキャスト
サンシャイン劇場
14:00
- キャラメルボックス『アルジャーノンに花束を』/原作はかのダニエル・キイス。舞台版脚本はすでに菊池准による版があるが、今作はそれではなく、座付の成井豊による版。形式と内容を不可分にするあの「文体」をある程度そのまま朗読するかたちに、原典への敬意が。
- 成井豊作品には時に、以下のような役柄が設定される。色盲。聾唖。全身不随。しかし彼らはその一点を現実として背負うのみで、いわゆる「道徳的な」役割を課されることはない。その劇団の元で、チャーリイ・ゴードンは「一人の若者の愛と冒険の物語」の主人公となった。
- キャラメルボックスが、これまで培ってきた「キャラメルボックスという形」を活かしつつ誠実な仕事をし、また「キャラメルボックスという形」の故に存在するいくつかの枠を内側から静かに揺るがそうとしている、そんな印象。スタイルが強固な劇団だけに、その衝撃は強い。
- メイン2名のみダブルキャスト、今回は「イグニス」。阿部丈二のチャーリイは指先まで行き届いた精密な身体で、「一人称」という原典で最大の枠組みが外れた世界の中に存在感をもって立ち上がっていた。イグニスというチーム名に相応しい、静かに燃え続ける炎のような。
- 後は原典のことで。文庫版の序文でキイスは、世界中からチャーリイを自らになぞらえたという手紙を貰ったと述べた。人により箇所は違うだろうけれど、ああ、と思う。例えばロールシャッハ・テストで絵を見つけろと言われて、見つけられずに不安になるかれを、わたしはとても他人とは思えないのだった。