DULL-COLORED POPプロデュース「最後の精神分析 -フロイトvsルイス-」
日暮里d-倉庫
14:00
- ある種のいい作品には、祈りの瞬間があるように思う。白く眩しく澄み渡った、対象も、ときには願い事すらも定かでない、大きな祈りがあるように思う。
- 1939年。C・S・ルイス、40才。ジークムント・フロイト、83才。神を選択した男と、神を選択しなかった男。実際は出会うことのなかった二人の交わす激論。否応なしの「今」が彼らを圧し、怒らせ、恐れさせ、しかし彼らは震える身体で問い続けることをやめない。
- 日暮里d-倉庫に初めて行った。収容人数は100人前後と思われる小さな空間。その空間一杯に、ときに柔らかくときに強かに攻め立てる石丸幹二のテノールと、どんなに小さく短い一言であっても場を支配する木場勝己のバスが響き渡っていた。キャスト、空間、題材の幸福な融合。
- 言葉、言葉、言葉でもって議論と分析の剣を交わしつづけていたからこそ、たった一度の、あのひどく踏み込んだ接触の痛々しく生々しい息づかいが強烈に目と耳に焼き付いている。どうしてか、涙が出そうになった。生きることの切実さを思ったのかもしれなかった。